審査委員長
しりあがり寿先生
今回も前回と変わらずたくさんのご応募ありがとうございました。何度か投稿してくださる方も出てきて、この賞が、皆さんの間で定着してきたことを嬉しく思っています。今回のテーマは「感謝・ありがとう」ということで、ただ意外性がある面白いオチを狙うのではなく、自分がふだん思う「ありがとう」というシチュエーションや感謝の気持ちが素直に出ている作品がみれて、読んでいてとても楽しかったです。
『いつもありがとう』
簡単に言えば、「いつもありがとう」という感謝の気持ちが風船にのって上がっていくシンプルなお話。これが人に対する感謝、町に対する感謝、自然に対する感謝、そして最後は、地球、世界、宇宙に対する感謝へと広がっていくんですね。言葉もなく、この4枚の絵でそれだけ大きな感謝を表現しているのが素晴らしい作品です。
『はっぱさんとちびおにぎり』
それぞれ関係性のなかで感謝が生まれるお話ですね。お互いの思いが一致して、それぞれがそれぞれに「ありがとう」と感謝する。こういうことって現実でもたまにありますが、すごくいい瞬間なんですよね。それを葉っぱとおにぎりという一見意外な組み合わせで描いているのが、素直に感じられていいなと感じました。
『ものもち』
「感謝」をテーマにしたときに、ものを大切にするということが、作品に明確に出ていますし、何といっても絵が見やすくて、きれいですよね。最後のオチの絵が迫力もあって大賞に相応しいと思います。
『クリスマスプレゼント』
僕の好みです。おじいさんがサンタさんになって、届けにくるというシチュエーションですが、それ以外は全部出鱈目というか、適当というか。なぜか魚を持っているし、滝の中から出てくるしね。大好物でした。
中野晴行審査員
『じいちゃんとカメ太』
おじいちゃんは自分に対して「ありがとう」と言っていると思うけど、実はカメに感謝をしていた。普通の4コマ漫画だとそこで終わりそうですが、最後に別のオチをつけて、爺ちゃんが「まあいっか。長生きするぞ」と。2段オチですね。これはもしかしたら子供だからこその発想ではないでしょうか。4コマ目で感謝が完結するという。絵もわかりやすく、とてもいいと思います。
『ありがとう』
「ありがとう」が1日ずっとくっついてくるんだけど、いずれスーッと消えていくというお話ですが、「ありがとう」じゃなくてもいいのかなという気がしました。もう少し「ありがとう」を使う意味がわかりやすいと、良くなると思います。昨年に続いて惜しくも大賞を逃しました。来年もぜひがんばってください。今年も応募してくれてありがとう!
『やさしい男』
作者は関西の方かな。関西では日常の会話で最後のオチをつける練習ができているからでしょうか、とてもうまいですね。こわい男を見た目で人を判断してはいけないというルッキズムの問題もうまく取り入れてはいますが、実はやさしいというところに、もうひとひねりあると、さらによくなると思います。絵も上手いし、達者な作品なので、オチをもう一工夫あるとよいですね。
山内康裕審査員
『みんなにありがとう』
お父さんとお母さんとお兄さんへのありがとうという言葉が綴られていて、家族に対して大好きだと伝えているストレートでいい作品だなと思いました。大好きだという表情と姿の描き方に心温まる作品でした。
『いつもいろんなことをしてくれてありがとう』
お母さんが家事をしている姿をゆーりんごさんがずっと見ていて、お母さんへの感謝という普段から思っていることを表現していて。ちょっと照れくさい気持ちもありながらも、感謝を伝えているいい作品だなと思いました。
『忠犬メリーさん』
一番クスッと笑わせてもらった好きな作品です。4コマ漫画としての展開はいい意味で古典的、それでいて一つひとつの絵柄に味わいがあり、とても印象的でインパクトがありました。
『忘れない。』
セリフがないのにも関わらず、火をともすことで心があたたまるという描写で暖かさが伝わってくる素晴らしい作品だと思いました。サイレントマンガとして子供にもグローバルにも届けることができるのも良いと思いました。
小出ミキオ審査員
『急な雨』
応募作の中で、傘がモチーフの作品は多かったのですが、その中でも印象に残りました。余白の使い方がすごく上手ですし、何と言っても絵の可愛らしさが気に入りました。
『Thank You』
全作品の中で一番笑った作品です。最後のオチもシャレが効いていますよね。最後まで大賞と競い合った、素晴らしい作品だと思います。
『やっと、来たよ…』
トキワ荘のマンガ家さんたちに対してたくさんの夢を与えてくれてありがとう、という気持ちが込められた作品。ひとつ言えば、ミュージアムができたのは、何と言っても豊島区のおかげなので、高野前区長はじめ地域住民への感謝も加えていただけるとさらによかったと思います。
野々部利弘審査員
『めぐみの雨』
小学校2年のすずちゃんが、日常に降る雨のことを、生命の大事なエネルギーとして感じていて、その雨の力に「ありがとう」と感謝の気持ちを込めています。枯れている木は、滑稽なくらいにぐったりと本当に疲れてしまっていて、元気になった木は、天に向かって一柱に伸びる力強い姿で描けているのが素晴らしいし、とてもシンプルだけど大切なメッセージを感じる可愛いマンガでした。
『よろこんでくれたから』
「ありがとう」の反対語は「あたりまえ」だそうです。あたりまえなことに日々気づかず、時間が経ったときに、この「あたりまえのことが、ありがたかった」と感じたのでしょうか?仏花の絵もあって、母親はこの世にもういないのかもしれないけど、その思いを伝えられたことを、このマンガから感じられました。絵もパステル調で重くなく、可愛らしくて素敵な作品だと思いました。